はじめてのびこう~たーげっと=さいきょうちゅうがくせい~
「先輩と会長さんは…どうしていつもあんなに仲がいいんでしょうか…?」
無表情な未確認生物の他愛ないそんな質問から、智樹たちの調査は始まった。
はじめてのびこう~たーげっと=さいきょうちゅうがくせい~
「ねえ、やっぱりやめようよトモちゃん…。バレたらきっと、たくさん怒られちゃうよ?」
美香子と英四郎の尾行、開始10分後の出来事である。
元来他人を疑ったり、騙すことが苦手なそはらが、小さく手をあげた。
そんな彼女を励ます為か、尾行を続けたいが為か。ニンフが智樹の代わりに胸を張って
「大丈夫よそはら!!私のPーステルスシステムは、αだって騙せる凄いシステムなんだから!」
と答えてみたが、その表情は暗いままだ。
「でも…もしも先輩と会長が、その…そういう関係、だったりしたら…」
「そん時は、みんなでからかってやればいいって。それにそんなに嫌なら、そはらは先に帰っててもいいんだぞ?」
そはらの乙女心を知りもしない智樹の発言は、余りに不用心だった。
数秒と置かずに、殺人チョップが炸裂である。
勘のいい美香子と英四郎に気がつかれなかったのは、まさにニンフのお陰なのだろう。
数分後。
傷だらけになった智樹が、腕組みをしながら呟いた。
「にしても…、守形先輩と会長って単なる幼なじみってだけじゃねーのかなあ…」
「だってほら、前に会長の家に泊まりに行ったときとか…」
「ああ…。そういえばそうだ」
そはらが指している前、とは、智樹たちが五月田根家に泊まりに行ったときの事である。
どういう経緯があるのかは不明だが、英四郎は客人である智樹やそはら以上にもてなされていたのだ。
「だからって…あの二人が恋人同士っていうのは…ちょっとなあ」
智樹はそう言って首を捻った。智樹にとって、英四郎と美香子は自身の幸せな毎日をむやみやたらに崩す悪玉菌である。
五月田根美香子は、常に腹黒く智樹を弄ぶし。
守形英四郎は、周りなど気にもとめず、否が応でも不幸に巻き込んでくる。
どちらも平和を愛する智樹の天敵であった。
だからこそ、そんな二人がお互いを愛し合い、慈しむ仲だとは考えられないのだ。
「ねえ、トモキ」
「は?」
P-ステルスシステム展開中のニンフが、智樹の袖を引っ張った。
「前々から思ってたんだけど、ミカコとスガタって、こうみるとただのカップルじゃない?」
「はあ!?」
だってほら、とニンフが指差す先では、商店街の雑貨屋前で談笑する二人の姿があった。
「本当だ…。トモちゃん、見て見て!」
「い、言われなくてもみてるって!……た、確かに…」
今の二人を切り取り、見せられたなら、十人中十人が恋仲であると予想するであろう景色だった。
鈍感な智樹が見ても、二人の様子は恋人のそれである。
「会長も先輩も少し変わってるから、つい、忘れちゃいがちだけどさ…。やっぱり二人とも、凄くきれいだよね…」
そはらがため息混じりにそう呟いた。
「やっぱりそうなのね。私にはよく分かんない感覚だけど、流石に毎日昼ドラみてれば何となく察するわよ」
ニンフがそういうと、イカロスも少し嬉しそうに
「それに…守形先輩といるときの会長さんは……凄く、優しい表情をされているように見えます…」
と言った。
女子三人の意見は見事に合致している。
智樹が口を出せる隙間はないようだった。
「仕方ないな…。帰るか」
「いいの?トモちゃん」
「いいの!それに、俺腹減ったからさ、はやく帰って晩飯食って寝る!」
智樹はそう叫ぶと、誰よりもはやく踵を返した。
少し驚いたように目を見開いていたそはらも、やがて小さく笑って
「トモちゃんらしいね」
と、笑った。
「あんたはいいの?α」
「マスターが…それをお望みなら…」
「そっか…。そうよね、帰りましょ」
ニンフがそう言うと、イカロスも小さく頷き、智樹の後を追った。
『でも…本当に、どうしてなんだろう…?』
どうして、あんなに幸せそうに見えるんだろう?
*****
本当はこれはおまけな予定でしたけれど‥
もうこれで終わったというかフラグ回収出来てないまま保存中です。
つづくといいな。←
「先輩と会長さんは…どうしていつもあんなに仲がいいんでしょうか…?」
無表情な未確認生物の他愛ないそんな質問から、智樹たちの調査は始まった。
はじめてのびこう~たーげっと=さいきょうちゅうがくせい~
「ねえ、やっぱりやめようよトモちゃん…。バレたらきっと、たくさん怒られちゃうよ?」
美香子と英四郎の尾行、開始10分後の出来事である。
元来他人を疑ったり、騙すことが苦手なそはらが、小さく手をあげた。
そんな彼女を励ます為か、尾行を続けたいが為か。ニンフが智樹の代わりに胸を張って
「大丈夫よそはら!!私のPーステルスシステムは、αだって騙せる凄いシステムなんだから!」
と答えてみたが、その表情は暗いままだ。
「でも…もしも先輩と会長が、その…そういう関係、だったりしたら…」
「そん時は、みんなでからかってやればいいって。それにそんなに嫌なら、そはらは先に帰っててもいいんだぞ?」
そはらの乙女心を知りもしない智樹の発言は、余りに不用心だった。
数秒と置かずに、殺人チョップが炸裂である。
勘のいい美香子と英四郎に気がつかれなかったのは、まさにニンフのお陰なのだろう。
数分後。
傷だらけになった智樹が、腕組みをしながら呟いた。
「にしても…、守形先輩と会長って単なる幼なじみってだけじゃねーのかなあ…」
「だってほら、前に会長の家に泊まりに行ったときとか…」
「ああ…。そういえばそうだ」
そはらが指している前、とは、智樹たちが五月田根家に泊まりに行ったときの事である。
どういう経緯があるのかは不明だが、英四郎は客人である智樹やそはら以上にもてなされていたのだ。
「だからって…あの二人が恋人同士っていうのは…ちょっとなあ」
智樹はそう言って首を捻った。智樹にとって、英四郎と美香子は自身の幸せな毎日をむやみやたらに崩す悪玉菌である。
五月田根美香子は、常に腹黒く智樹を弄ぶし。
守形英四郎は、周りなど気にもとめず、否が応でも不幸に巻き込んでくる。
どちらも平和を愛する智樹の天敵であった。
だからこそ、そんな二人がお互いを愛し合い、慈しむ仲だとは考えられないのだ。
「ねえ、トモキ」
「は?」
P-ステルスシステム展開中のニンフが、智樹の袖を引っ張った。
「前々から思ってたんだけど、ミカコとスガタって、こうみるとただのカップルじゃない?」
「はあ!?」
だってほら、とニンフが指差す先では、商店街の雑貨屋前で談笑する二人の姿があった。
「本当だ…。トモちゃん、見て見て!」
「い、言われなくてもみてるって!……た、確かに…」
今の二人を切り取り、見せられたなら、十人中十人が恋仲であると予想するであろう景色だった。
鈍感な智樹が見ても、二人の様子は恋人のそれである。
「会長も先輩も少し変わってるから、つい、忘れちゃいがちだけどさ…。やっぱり二人とも、凄くきれいだよね…」
そはらがため息混じりにそう呟いた。
「やっぱりそうなのね。私にはよく分かんない感覚だけど、流石に毎日昼ドラみてれば何となく察するわよ」
ニンフがそういうと、イカロスも少し嬉しそうに
「それに…守形先輩といるときの会長さんは……凄く、優しい表情をされているように見えます…」
と言った。
女子三人の意見は見事に合致している。
智樹が口を出せる隙間はないようだった。
「仕方ないな…。帰るか」
「いいの?トモちゃん」
「いいの!それに、俺腹減ったからさ、はやく帰って晩飯食って寝る!」
智樹はそう叫ぶと、誰よりもはやく踵を返した。
少し驚いたように目を見開いていたそはらも、やがて小さく笑って
「トモちゃんらしいね」
と、笑った。
「あんたはいいの?α」
「マスターが…それをお望みなら…」
「そっか…。そうよね、帰りましょ」
ニンフがそう言うと、イカロスも小さく頷き、智樹の後を追った。
『でも…本当に、どうしてなんだろう…?』
どうして、あんなに幸せそうに見えるんだろう?
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本当はこれはおまけな予定でしたけれど‥
もうこれで終わったというかフラグ回収出来てないまま保存中です。
つづくといいな。←
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