いくら二次元を愛してる同志だからって
別に異性として意識していない訳じゃないんすよね。
Real or Virtual?
「いやあ、やっぱり美少女っていいもんすねえ!二次元の少女たちこそがこの世の美!って感じがするっすよ」
「違うよー、二次元の男子こそがこの世の全てなんだよ、ゆまっちー」
今日も今日とて、絵理華とウォーカーはお互い噛み合っているような、それでいて微妙にずれている趣味の会話に没頭していた。
時刻は丁度お昼時。渡草と門田がコンビニで買ってきたあんパンを頬張りながら、電撃文庫の新刊を読みあさる二人を横目で見ながら渡草は呆れたようにため息をついた。
「全く…毎日毎日よくやるよな二人して。俺には理解できねェよ」
「えー!そっちの方が理解できないよ!ね、ゆまっち?」
「はいっす!二次元こそがこの荒廃した池袋で唯一汚れを知らない世界なんすよ!」
それなら池袋に住むな、と突っ込みたかったが、それを言ったところでまた反論されるのが関の山であると知っている門田は敢えて何も言わない。ただ黙々と惣菜パンを食べながら絵理華とウォーカーの会話を聞き流していた。
「じゃあ聴くけどよ、その…二次元か?じゃなくて、現実はどうなんだよ?」
「そりゃつまり、三次元での恋とか、そういうことを聴いてる訳っすか?」
「ああ、それだよ」
それまでずっと本を開きっぱなしだったウォーカーがそうっすねえ、と本を閉じた。そんなウォーカーを横目に絵理華は飄々と
「やだ渡草っちぃ。そんなの女の子に聴いたらセ・ク・ハ・ラ!になっちゃうじゃない!」
と言って、答えをかわした。
渡草も絵理華のその反応を予期していたのか、だろうな、と笑ってパンを頬張った。
門田は敢えて無言である。
「で、遊馬崎はどうなんだ?お前は、二次元の女の子より可愛い人なんている訳ないっすー、とかいうんじゃないだろうな?」
いやいやまさか、とウォーカーは笑った。
そして少し考えるように空中を見てから絵理華に視線を送る。
「へ?なに?」
視線の意味が理解できないまま、絵理華はまたあんパンを囓る。
「二次元はほら、みんながみんな嫁っすけど、三次元ならやっぱり…」
そこで一旦言葉を句切り横でパンを食べ続ける絵理華の肩を――
思い切り抱き寄せた。
「…?なぁにゆまっち」
「やっぱり狩沢さんしか考えられないっす!」
「っな‥!」
あ、やっぱりぃ?私もー、などと笑いながら絵理華はウォーカーにもたれるように寄り添った。
「おい!いちゃつくなら時と場所と場合を考えろ!今は食事中だぞ!」
パンを食べ終え読書にふけっていた門田が漸く発したのは二人に対する粛正の言葉だった。
「えー、愛し合う二人を引き裂くなんてKYだよドタチーン!」
「そうっすよ!門田さん!」
ねー、といいながら顔を合わせる二人に門田は呆れてため息さえ飲み込んだ。
「まあまあ、落ち着けよ門田。いつもの事だろ」
門田の心中を察した渡草が慰めるように二つ目のパンを差し出した。
「…分かってるさ」
パンの袋を破りながらフロントミラーに映る後部座席の二人をそっと見遣る。
「じゃあもう結婚しちゃいますか!?」
「そしたらゆまっち、もう私のこと狩沢さんって呼べないねー」
「むむッ!それはそれでもの悲しいっすね…」
相変わらず抱きしめられたままの絵理華と、至極幸せそうに笑うウォーカーがそこにはあった。
『全く、そんなこと毛ほども思ってねェ癖に』
そんな愚痴を心で垂らしながらも、いつもと変わらないワゴン車の中の風景に門田は微笑みながらパンを頬張った。
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かなり前のゆまかり!
たぶん中学生の頃とかに書いたんでしょうね。ツッコミ所満載ですね。
恥を忍んで晒します。遊馬狩うふふ。
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